手の届く範囲で確かな意思やこだわりを持って働く方をゲストに迎え、仕事作りのヒントをお伺いする「こ・あきないの学校」。
9月14日(土)に行われた授業は、「食と地域とこ・あきない」と題し、気仙沼市唐桑町舞根(もうね)湾で、牡蠣や帆立の養殖を行いながら、「舞根キッチン」という屋号で海産物や加工品の直売を行っている畠山菜奈さんをゲストにお招きしお話を伺いました。
海の暮らしに魅了されて
畠山さんが舞根(もうね)に関わるようになったのは、2010年NPO法人森は海の恋人の活動の一環として、夏の子どもキャンプのスタッフをしたことがきっかけでした。団体は、豊かな海を守るために森を大切にしようと活動をしています。宮城県の内陸育ちの畠山さんは、「6泊7日と短期間でしたが、一気に海の暮らしの虜になってしまいました」
2011年の東日本大震災の直後には、ボランティアとして舞根の片付けを手伝っているうちに「舞根で暮らしたい、地元に根付いた仕事がしたい」という気持ちが募り、そのまま舞根の「水山養殖場」で働くことになりました。
(若干、途中経過は端折りますが…)「舞根で一緒に暮らさないか」という水山養殖場の次男、畠山耕さんの言葉を受けて結婚。現在は、3人のお子さんを育てながら大好きな舞根で、大好きな海の仕事を続けています。
人と食と風土をつなぐ仕事がしたい
2022年3月には、地元気仙沼とその近郊で牡蠣や帆立などの海産物を直売する「舞根キッチン」を開業しました。起業の構想は、気仙沼市主催の起業塾「アクティブウーマンズカレッジ5期生」を受講する中で、繰り返し自分自身を見つめ直したことで生まれてきたものでした。
「気仙沼で生産されている牡蠣ですが、地元ではなかなか手に入らないことが多いんです。夫が手間をかけて作った牡蠣を食べたいと思っている人に直接届けたい。美味しく食べて楽しんでもらえたら、どんなに嬉しいことだろ」と畠山さんは考えました。
その思いを夫に相談してみると「直接販売するなら移動販売の許可やキッチンカーが必要だね」と実現に向けてポンポンと話が進んだのでした。
屋号には必ず大好きな「舞根」の土地名を入れたかったこと、舞根からお客さんの台所に海産物を届けたいという思いを込めて「舞根キッチン」という名前にしました。
地域や家族の中に助けてくれるパートナーを増やす
畠山さんの場合は、完全な新規創業ではなく、もともと嫁ぎ先であり仕事場であった水山養殖場という母体があり、地元の生産物である牡蠣や帆立を上手に活用してきたという背景があります。
その一方で畠山さん自身が、家事や子育てなどいろいろな役割を担うなかで家族や地域の方々の協力を得ながら、新しい仕事に挑戦してきたプロセスは、これから起業をしようとする方々にとって、学ぶことが多いお話でした。
◎おやつタイム◎
舞根キッチンで販売している「いちごミルク」をいただきました。昨年から山水養殖場では、いちごの栽培を始めました。漁業者が育てる「いちご」です。5月頃に収穫、無加水加工のいちごシロップと急速冷凍したカットいちごに、気仙沼市の牧場「モーランド牧場」の牛乳を注いで作る「いちごミルクキット」です。
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「こ・あきないの学校」全6回
◆オープニングイベント 仁平古家具店のはじまりと今
●日 時:9月1日(日)13:00-15:00
●話し手:仁平透(仁平古家具店 店主)栃木県真岡市
◆プログラム01 食と地域とこ・あきない
●日 時:9月14日(土)13:30-15:00
●話し手:畠山菜奈(舞根キッチン)気仙沼市唐桑町
◆プログラム02 カフェとギャラリーとこ・あきない
●日 時:9月28日(土)13:30-15:00
●話し手:田代成(Satomi kiln)仙台市青葉区
◆プログラム03 花とこ・あきない
●日 時:10月6日(日)13:30-15:00
●話し手:大塚のぞみ(Botanical People 店主)松島町高城
◆プログラム04 喫茶とこ・あきない
●日 時:10月26日(土) 10:30-12:00
●話し手:菊地祥史(喫茶コーヒーワークス 店主)仙台市泉区
◆プログラム05 こ・あきないの学校をふりかえる
●日 時:11月9日(土) 13:30-15:00
■主催:利府町
■企画・運営:一般社団法人Granny Rideto
■協力:旅と本とおやつと
(tsumikiチーフコーディネーター 葛西淳子)