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「Loose Colony 〜11年目からのまなざし」をふりかえり〜佐竹真紀子。

2022年3月2日(水)から11日(金)までの10日間、利府町文化交流センターリフノスにおいて、佐竹真紀子展「Loose Colony 〜11年目からのまなざし」を開催しました。10日間の展示会をふりかえり、佐竹さんからメッセージをお寄せただきました。

地元を旅して出会いなおす

地元の利府で展覧会をはじめて開催しました。この企画が生まれたきっかけは大きくふたつあります。ひとつは、被災地域を訪ねて話を聞きながら作品をつくる活動をtsumikiのスタッフさんが長らく気にかけてくださり、「地元でも展示してみたらどう?」とお声をかけていただいたこと。
もうひとつは、町内に大きな文化複合施設がオープンしたことです。tsumikiと利府町文化交流センター「リフノス」というふたつの場、ふたつのコミュニティによる協働とバックアップでこの企画が成り立ちました。

 
今回の展覧会にあたって、過去作の展示とともに、利府で出会う人びとからお話を聞いて《Loose Colony 2022》という新作をつくりました。私は利府に住んで長いのですが、震災にまつわる出来事を地元で聞く機会はもとより、地域と関わる機会そのものを自分からつくれずにいました。近いようでいて知らないことだらけの「このまち」と出会いなおす感覚で、tsumikiのスタッフさんから人を紹介していただいたり、スペースを利用してのヒアリングをおこない、人と会うことからを少しずつはじめました。


内湾と山間部のどちらの暮らしもある利府では、被災体験もさまざまで、その後の生活も当然ひとりひとりちがいます。震災後に利府へ越してきてもう10年になるね、という方々にもお話を伺う過程で、彼女たちの過ごしてきた11年の時間、歳月を重ねて彼女たちももうこのまちを形づくるひとつであると繰り返し思考しながら絵とテキストを起こしていきました。

3月に、震災をまなざす表現が広場にあること

展示会場リフノスのアトリウムは、赤ん坊からご高齢の方まで実に幅広い年代層が行き交っていて、夕方になると近隣の学校の生徒たちが日常の居場所として過ごす、広場のような場所です。施設に来た際に作品群をじっくりみてくださっている方がたくさんいらして、とても驚きました。


関連イベントの鑑賞交流会には、利府にゆかりのある方だけでなく、仙台市荒浜など、これまでうかがってきてお世話になった土地の方々にもご参加いただき、作品の背景についてお話ししました。さまざまな土地の人が集うと、多く言葉を交わしていなくてもそれぞれに大事な場所や風景を持っていると想像できるようで、得難い時間となりました。


在廊中は、展示をご覧になった方々と作品を観た感想だけでなく、住んでる地域や震災のことについておしゃべりする機会も多かったように思います。展示の隅に自由に書いて投函できるミニポストを設置してみたところ、こちらにもさまざまなコメントをお寄せいただきました。小さな子や若い世代からの絵やコメントの投函もあれば、震災に寄せる感情やその後の日々を整理しての言葉の投函もありました。


利府の地域をフォーカスしてみると、より困難な体験をした人がいるからと配慮するが故に、被災体験や感情をあまり語ってこなかった人が多いように感じます。長い歳月をかけて語りはじめる人もいることと同様に、災禍の経験を継続的に語らずにいられるまちだからこそ、自分なりの生活を保てる、という人も多くいるはずです。

展覧会の終了後に大きな地震(※)があったため、なおさら、日常を大事にしながらも災禍にまつわる出来事をまなざしていける表現とはどんなものだろう?と振り返っています。多様な人が交差する広場にどんな表現が置かれると問いが生まれるか、これからも模索していけたらと思います。

※3月16日福島県沖を震源とする地震が発生。

今回の企画にあたりご協力くださったみなさま、ご覧くださったみなさま、本当にありがとうございました!

(美術家 佐竹真紀子)



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