2020年秋、tsumikiでは、社会性・地域性・ブランディングの視点から事業の創出を目指す起業セミナー「新・生業(なりわい)塾」を開講しました。
11月末の報告会で、自分の生業を作り出すことを宣言し、動き出した8名の受講生。それぞれが新しいビジネスを創るべく奮闘しています。
塾の卒業から約3カ月が経ち、「いま、こんなチャレンジをしています」とうれしい活動報告が寄せられました。
◆ 寄せ植えRötter(ルッテル) 北條恵子さん
「利府町の花屋」をめざして事業を継続する中、「コロナ禍でもお客様と新鮮な花を楽しみたい」と複数店舗が集まるマルシェに参加することにくわえ、単独出店にもチャレンジしました。2月と3月に、tsukimiを活用して寄せ植えワークショップと花苗の販売会を実施すると、毎回常連客がお友達を誘ってやってきてファンが増えていきました。「出店に合わせて新鮮な花を仕入れ提供し、お客さんに喜んでいただきたいと思います」と北條さん。今後も月一回の定期出店を目指します。
◆ 子育てサロン「りとるてって」 須田優佳さん
利府町を中心に、ベビーマッサージなどの講座を対面型、少人数制で実施しています。コロナの状況下、やむなく延期や中止にした講座もありましたが、3月から初めてオンライン講座に挑戦すると、意外な効果がありました。「町内の方だけでなく、以前の活動拠点だった栃木県の方々にも参加していただきとても好評でした」と須田さん。遠方のお客様のリピート参加が励みになったといいます。
◆ 心と体にやさしい菓子づくり 阿部知子さん
卒業生同士のコラボも実現しました。植物性食材を使用したお菓子作りを目指す阿部さんのタルトを、「りとるてって」の須田さんの講座の中で提供。試食してもらったところ、食に関心がある子育て世代から注目が集まりました。できるだけ体に優しい食材でつくりたいとこだわっている阿部さん。「今後はワンデーカフェを企画して多くの方に食べてもらいたい」とにっこり。レシピ開発にも集中して取り組んでいます。多賀城市の広報誌に名産「古代米」を使ったレシピを寄稿し、お菓子づくりから活動の幅を広げています。
◆ 陶芸家「nocolier」 熊谷苑子さん
利府町在住の陶芸家熊谷さんは、陶芸の魅力を広めたいと2020年夏以降、絵付けのワークショップに力を入れてきました。「初の試みでしたが、参加した方から後日お礼のメールをいただき、とても喜んでいただけました。自分が初めて作品を作った時の感動を思い出しました」と手ごたえを感じています。
一方、出店販売では継続的に経営していくために、覚悟を決めて陶器作品の値上げに踏み切りました。「塾での学びがあったから決断できました。常連のお客様も受け入れてくださっているようでありがたいです」と、先を見据えた挑戦が実を結びつつあるようです。
◆ パンとお菓子とコーヒー「コトリコーヒー」 庄司美穂さん
多賀城市で、コーヒー豆やパンを製造し、ECサイト等で販売しながら、化学物質過敏症など病気のある方も泊まれる宿泊施設の運営を目指しています。塾終了直後、病気の当事者である庄司さんの活動にメディアも注目。新聞に掲載されると、同じような悩みを抱えている方から多くの反響がありました。多賀城市市民活動サポートセンター主催のSDGsをテーマとした会議では、患者の立場から香害についてゲストスピーカーとして登壇しました。そしてこの春、同センターを会場に、同じ悩みを持つ人と情報交換する場「コトリじかん。」を立ち上げました。並行して宿泊施設の物件探しも進めながら「香害などで悩む方々が安心して過ごせる場を作ろう」と改めて決意しています。
◆ 映像カメラマン 佐藤啓太さん
映像制作を生業にしようと奮闘中。さまざまな被写体で経験値を積むことを目的に、動画・写真撮影のモニター会を企画しました。同じ塾生の石井洋子さんがプロデューサーの役割を担い、企画の立ち上げや告知、集客をサポートしました。
2月28日、tsumikiを会場に開催したモニター会では、動画1件、写真5件の撮影を実施。佐藤さんは「よいチャレンジになった」と振り返ります。「制作した動画を見ていただいた方から、次の依頼をいただきました。今後はお客様の要望に合わせて具体的な映像プランを提案できるようにしたいです」とますます意欲的です。
◆ ゆっくりできる美容サロン 石井洋子さん
円形脱毛症などの病気を持つ人が気軽に来れる美容室のオープンを目指しています。身近な人の発症をきっかけに美容室の立ち上げを決意しました。首都圏から越してきたこともあって、tsumikiで行われるイベントなどに積極的に参加し利府町周辺のマーケティングを行っています。経営していくうえでの協力者も探しながら、夢の実現に向けてまっしぐらです。
◆ 着物リメイク「あたらさ」 太宰圭子さん
利府町を中心に着物リメイクで活動中。仕立て直しの依頼に応じて着物を預かり、出来上がるとお客様にお渡しするため、手もとには商品として残っていませんでした。そこでお客様がオーダーする際に参考にしてもらえるようにと、チュニックやワイドパンツなどサンプルを5点ほど制作しました。「サンプルがあることでお客様に商品の説明がスムーズにできるようになりました。お客様も仕上がりをイメージしやすくなったと思います」今後はリーフレットや名刺も整え、PRしていこうと歩みを進めています。
3月に入ってもコロナウイルス感染が収まらず、なかなか先まで見通せない状況ではありますが、新・生業塾生は、それぞれのペースで工夫しながら進んでいます。
ピンチをチャンスに変えようと頑張るみなさんを、tsumikiはこれからも応援していきます。
(tsumikiコーディネーター 板橋芳理)