\CHALLENGER/
tsumikiを中心に、利府町でチャレンジする人々をご紹介します。
今回は、利府町須賀で漁業を生業としている櫻井さん親子にお話をうかがいました。
▲写真左から 櫻井保さん 統也さん
「海の恵みを受け、海を遊びつくし、自然に暮らす」
櫻井 保さん 櫻井 統也さん
(民宿ハーバーハウスかなめ)
七かなめ丸船長の櫻井保さんと、息子の統也さん。利府町赤沼字須賀で、漁師をしながら、民宿を経営しています。最近では漁体験や島巡りツアーなども実施。親子で漁業を継承し、利府を訪れる人々をもてなしています。
利府に伝わる漁法
保さん:利府の漁業は、カキやワカメの養殖が主流だね。うちでやっているのは、リアス式海岸の地形を利用した伝統漁。上げ潮のときに網を設置し、下げ潮のときに海面を竹で叩いてその網に追い込んでいく追い込み漁や刺し網漁。時期によるけど、よくかかる魚はコハダ・ボラ・スズキなどかな。刺し網だとカニやシャコがよく獲れるね。
ツアーでは、この漁法をお客さんに体験してもらっている。うちの場合、漁業体験型のツアー中心にやっているので、毎日いろんな人との出会いがあるから楽しいね。
やっぱり養殖だけでは、そんなに後継者が残らない。それが嫌で若者が出て行くんだから。幸いうちには後継者がいるけど、他の漁師はいないと聞いる。漁業を通して若者が本当に楽しめる職業をつくらないといけないね。
漁師の道を選んだわけ
保さん:選択の余地はなかったね。ずっと流れできているから。
統也さん:小さい頃から海へ出て、ずっと父の仕事を見ていたから自分もこうなるんだろうなというか、それ以外考えたことはなかったです。学校への憧れもたまにあるけど、元々
釣りが好きだったし漁師になってよかった。
もちろん最初は「できるかなー」って不安はあったけど、今は楽しいです。同級生が漁業体験に来てくれて、その子が連れてきた友達とも仲良くなって、今ではその友達のほうが常連になってよく来てくれます( 笑) 。とにかく、お客さんに喜んでもらえることが嬉しくて、だから今の仕事にやりがいを感じています。
発想の転換
保さん 今、取り組んでいることは、湾内の無人島でドローンを飛ばす体験をツアーに入れて、海での遊びの楽しみ方を増やすこと。ドローンからの景色は最高だよ。やっぱり松島湾の景観がいいから感動するね。今まで見たことない視点から景色を楽しめるし、上空からの記念写真も撮れるから、これはいいんじゃないかなと思っています。
すでに、決められたコースを駆け巡りスピードを競う新しいスポーツとして、ドローンレースに参加しているような人たちが、全国から島に来ています。もしドローンレースが利府の海で開催されるようになったら、全国いや世界中から人が集まるかもしれない。イベント会社の人たちも来ているし、ここでドローンのイベントをやるということになれば新しい仕事が増えると思う。そうなったら私と息子の間の層、30 代くらいの人が利府に戻ってくるかもしれないね。
こんなふうに自分が楽しいと思うものをお客さんに提供して、楽しんでもらいたい。だからどうやったらお客さんに漁業体験やツアーを楽しんでもらえるかってことを一生懸命考えるわけですよ。
息子には、その方法を直接教えるのではなく、私のやり方を見たり、島や地域の歴史も覚えたりした上で、自分なりの楽しませ方を身につけてほしいと思っています。これからは、地元の資源を活かしがなら、漁業を通して新しい仕事を作っていかなきゃいけないと思いますね。
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先祖代々、時代に合わせてお客さんへの楽しませ方を変えてきた櫻井さん一家が辿り着いた、新たな挑戦は、最先端技術ドローンとの組み合わせ。それは利府での従来の生業から新しい職業を生み出す可能性を感じました。
取材・文 tsumikiコーディネーター 佐藤陽友
『つみきのキモチvol.4』掲載(2017.6.30発行)