委託販売は練習の場-“もゆる庭”鈴木もえみさんに聞く

今回お話を伺ったのは、利府町で「もゆる庭」として活動する鈴木もえみさんです。

自宅の庭づくりをきっかけに植物の魅力に惹かれ、歯科衛生士から植栽関係の仕事へと転身したという異色の経歴の持ち主。tsumikiの委託販売にも半年間チャレンジしました。その中で感じたことや気づき、そして今後挑戦したいことについて、率直に伺いました。


「窓の外」を変えたい! 庭づくりを始めたきっかけ

Q:お仕事について教えてください。

A: 宿根草を用いて、お庭のデザインや植栽、メンテナンスを行っています。お客様の暮らしに寄り添い、その家ならではの景色を大切にしています。なぜ宿根草なのかというと、宿根草は多年草で、季節の移ろいとともに変化が見られ、庭に自然な調和をもたらしてくれるのが好きなんです。

Q:お仕事はどのように進めるのですか。

A: ご依頼を受けたら、まず現地にお伺いし、お客様とお会いします。現場の状況と、困っていること、好きなイメージなどをヒアリングし、自分にできることとできないことを正直にお話しします。その後、プランと見積もりを作成するという流れです。

Q:デザイナーさんに似ていますね。

A: そうですね。お庭のデザインを考えるので一緒です。

Q:庭づくりの仕事を始めたきっかけは?

A: 自宅の庭をつくってもらったことがきっかけです。中古住宅を購入しリノベーションしたのですが、室内は好きな空間に仕上がったのに、窓の外の景色だけが残念で…。

最初、自分で本を読んだりして試みましたが、全然うまくいきませんでした。そんなとき、仙台の「緑化フェア」で見たウェルカムガーデン*がとても素敵で、「こんな景色を家の窓からも見たい」と思い、デザインした方を探して依頼しました。すると、家のウィークポイントだった庭が、一番のお気に入りの場所に。そこから植物の魅力に一気にはまりました。
*ウェルカムガーデン…来訪者を歓迎する目的で、施設などの入口に設けられる花壇や庭園のこと

宿根草は組み合わせがしやすく、庭になじむのが特徴だ

30歳前後に感じたモヤモヤ、そして決断

Q:この仕事を始める前は何をしていましたか?

A: 歯科衛生士として働いていました。職場環境もよく、続けられない理由はなかったのですが、30歳前後に「このまま続けていいのかな」とモヤモヤするようになりました。

そんな時、「何をしている時が一番楽しい?」と友人に聞かれ、「猫をなでている時と庭にいる時」と答えたら、「猫をなでるのは仕事にならないから庭をつくってみたら?」と言われたことが、心にすごく残ったんです。

Q:それで転職を決意したのですか?

A: いえ、その時は一度逃げたというか、もう年齢も重ねてきたし、今から独立なんて無理だよなと。でも「このままじゃいやだ」という気持ちはあったので、最初は副業的にお菓子作りなんか始めたりして。

Q:お菓子作りもされていたんですね。

A: はい。最初はやっていたのですが、クッキー缶などを販売したとき、ただひたすら作り続けるのがしんどくなって…。だけど、お庭にはずーっといられるんですよね。で、あるとき、医院でマウスピースを作っている最中に、「これを30年続けるのは無理だ」と思って、パーンと辞めました。すごくいい職場だったし、給料も休みも取りやすくて環境に恵まれていたんですけど…。あまり参考にならないですね。笑

Q:転職して最初、どんなことが大変でしたか。

A: 一番大変だったのは、私のことを知っている人がいないので、「どこから仕事を取ろうかな」ということですね。あとは、植栽の先生に教えてもらったり、本を読んだりして勉強したのですが、始めたのが遅かったので、できないことも多かったです。


委託販売は「練習の場」だった

Q:そんなときに、tsumikiを知った?

A: はい。最初は、tsumiki のスペースをお借りして一人で販売会を開きました。「お客さん、来てくれるかな」と不安もありました。最初はあまりお客さんが来なかったけど、何度か続けるうちに少しずつ知ってもらえるようになって、つながりも増えていきました。実際にお仕事のご依頼をいただくことも増えました。

少しずつ実績がついたことで、「森のこあきない市」のような大きなイベントにも挑戦できるようになったり、仲良くなった個人事業主さんと小さなマルシェを開いたりするようになって。そうした経験を通して、「委託販売もやってみようかな」と思うようになりました。

▲tsumikiで行った販売会の様子。多品種が並ぶ
▲tsumikiの玄関に置かれた寄せ植え。もゆる庭の小さなサンプルガーデンだ

Q:委託販売を経験してみてどうでしたか?

A: 振り返ってみると、「もっといろいろできたかな」という気持ちです。後悔とは違うのですが、「ちょっと売れたらラッキー」くらいのテンションだったので、取り組みが甘かったなと。

Q:そうなんですか?そんなふうには見えませんでしたが。

A: 在庫をたくさん抱えていたので、それを少しでも置かせてもらって、さらに売れたらラッキー、くらいのサブ的な捉え方をしていました。

でも、将来的に自分の店舗を持ちたいという夢を考えると、もっと挑戦できたんですよね。

例えば、仮想店舗をやってみるつもりで、ある一定期間tsumikiをお借りして、店舗を運営するような疑似的な体験を積んでおけばよかったなと思います。

Q:なるほど。ほかに気づいたことや学んだことはありますか。

A: 委託販売って、委託料*や振込手数料など、分散する料金があるじゃないですか。だから、委託をするときに、ちゃんと自分の手元にお金が残るような値段設定も考えました。少しお値段が張ってしまうのですが、それでも買ってくれる人がいるんだ、というのがとてもうれしかったです。
*委託料…tsumikiでの委託料は、売上のうち食品10%、物品15%を徴収する仕組みとなっている


大切にしている「真摯な姿勢」と「新しいチャレンジ」

Q:心がけていることや大切にしていることは?

A: 「今できることに真摯に向き合って、ベストを尽くすこと」です。それと、一つの現場があったら、何か新しいことに一つチャレンジすることですね。これ植えたことないけど植えてみるとか、組み合わせたことのない材料を組み合わせてみるとか。

それから、私の場合、オンラインで遠くの人と繋がるより、近くの人に知ってもらうことを大切にしています。

Q:仕事のむずかしさを感じることはありますか。

A: アイデアが降ってくるときと、そうでないときがあって。アイデアが固まっていないのに期限が近づいてくると、そわそわしてきます。

インスタグラムなどを見た方が、自分のテイストに興味を持ってお声がけいただくときはいいのですが、自分から仕事を取りに行ったときは、その人のことをよく知らないといい仕事ができないので、やはりヒアリングを丁寧にやって、その人との関係性を深めていくことが大切だなと思っています。

Q:ちなみに、どんなところに営業することが多いのですか。

A: カフェが多いですね。私自身がおしゃれなお店が好きなので、「窓から見える空間が素敵になったらうれしいな」とお声がけさせてもらうことがあります。

Q:困難に直面したときは、どんなふうにして乗り切っていますか。

A: 今年の初めに、今年の漢字一字というのを決めたんですよ。私は挑戦の「挑」にしたんですね。これがすごくよかったです。何か迷ったときに思い出して、逃げずにやろうっていう気持ちになります。おすすめですよ。


「暮らしの一部」となる庭づくりをこれからも!

Q:今後やってみたいことは?

A: サンプルガーデン*のあるお店を持つのが夢です。ワークショップができるスペースと、その周りに広がるガーデン、そんなお店をいつか持ちたいです。

また、庭がただそこにあるのではなく、庭で咲いた花を部屋に飾ったり、採れた実で何かを作ったりと、暮らしの一部として庭がある——そんな庭をつくっていけたらいいなと思います。

地域貢献というと少しおこがましいのですが、暮らしに寄り添う庭が増えることで、日々の満足度や街並みの豊かさが自然と高まっていく気がします。そんな形で「公共の街並み」づくりにも関わっていけたらうれしいです。

*サンプルガーデン…庭づくりの参考にしてもらうための見本の庭のこと。植物の組み合わせや季節ごとの変化を実際に見ることができる

Q:最後に、これから頑張ろうとしている人へ一言お願いします。

A: 本当にtsumikiは活動を広げるきっかけになったし、出店の練習とかたくさんできました。お客さんが来る来ないに関わらず、絶対に成長の場になると思います。何かやるとき、スモールステップを踏みたいときに、ぜひ活用してみてください!

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もゆる庭 鈴木もえみ
@moyuruniwa

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最後に

tsumikiを活用して活動の幅を広げ、委託販売にも挑戦した鈴木さん。その経験は、大きな学びとなり、成長へとつながりました。鈴木さんの取り組みが、読者の皆さんにとって少しでも参考になればうれしく思います。

鈴木さん、本当にありがとうございました。

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