人間が捨てたプラスチックゴミによって起こる海洋汚染。
その問題にアクセサリーというアプローチから取り組んでいるのが「win_win_win」こと、
瀬戸美穂さんです。
砂浜に流れ着いたプラスチックゴミを洗浄し、細かく切って作られた素材をレジンと一緒に固めるという工程を経て彼女の作品は作られています。
その時々に見つけた素材から作られるので、一つとして全く同じ作品にはならないというのも海洋プラスチックを素材として扱う大きな魅力です。
瀬戸さんは、2024年から活動を開始し、2025年4月からtsumikiでも作品を販売しています。同年3月に行われたtsumikiチャレンジプロジェクトアワードでは、審査員賞を受賞。1年半というまだ短い活動期間ながら、精力的に活動しています。
これまでアクセサリー制作の経験がなかった瀬戸さんが、海洋プラスチックアクセサリー作家として活動するようになった経緯、想い、現在制作しているコラボプロダクトについてお話をお伺いしました。
好奇心の種から今がある
「語り手」
瀬戸美穂さん、吉田(tsumikiスタッフ)

吉田:なぜ、海洋プラスチックを使ってアクセサリーを作ろうと思ったんですか?
瀬戸:元々海洋プラスチックに対する関心が特別あったというわけではありませんでした。ある日、家族で海に行って子どもを遊ばせていた時、砂浜に紛れているカラフルな粒がふと目に止まったんです。その時はそれだけだったんですけど、後日SNSで海洋プラスチックについて発信している方のアカウントをたまたま発見しまして、興味が湧いたので、その方が運営するオンラインコミュニティに参加してみたのが始まりでした。
そのコミュニティ自体が海洋プラスチックからアクセサリーを作っていたことがきっかけです。
吉田:海洋プラスチックがどのようにしてアクセサリーへと変わるのでしょうか。
瀬戸:海で集めたプラスチックゴミを一度クエン酸につけて洗浄します。乾いてから手作業で細かく刻んだものがアクセサリーの素材になります。毎回同じプラスチックゴミが漂流するという事はないので、集めた素材が出来上がるたびに次に作るアクセサリーのイメージが湧きますね。たまに印刷された文字などが素材に残っていたりするので、それもアクセントになって面白いなと思います。
吉田:アクセサリー作りからいざ事業に踏み込もうというのはなかなか勇気がいるなぁと思いました。
瀬戸:そうですね、昔から物を作ることが大好きで、好奇心も強い方なので活動自体はとても楽しんでやっていましたが、私が作ったものが売り物としてちゃんと成り立つのかという不安はありました。
ただ、活動を始める時に一つ決めていたことがありまして「誘われたら断らない」という事なんです(笑)。イベントの出店のお誘いをいただいた時は基本的に断らないようにしていますし、tsumikiの委託品の応募をしてみたのもtsumikを利用したことがある知人から「やってみなよ」と勧められたのがきっかけでした。とにかく声をかけてもらったらとりあえずやってみようと。
吉田:そのフットワークの軽さというのはなかなか真似できることじゃないので本当にすごいです!委託販売へ応募するにあたって、当初のtsumikiへのイメージはどうでしたか?
瀬戸:熱量が高い人が多そうだなと思っていました。こ・あきない市などの事業者に向けてのイベントなども多く行っている印象だったので、そういった人と繋がることができれば良いなという期待もありましたね。
実際にこ・あきない市(2025年冬)に出店させていただいたこともあって、出店への抵抗はかなり無くなってきたと思います。
吉田:tsumikiを利用して、次にチャレンジしてみたいことはありますか?
瀬戸:いつか自然豊かな場所で、作品制作とワークショップができるアトリエを持つことが今の目標です。そのために、環境問題についてももっと勉強が必要ですし、作品のクオリティも上げていかないといけないと思っています。
吉田:素敵な目標ですね。引き続きtsumikiでもお手伝いさせていただきます。
アワードを経て生まれたプロダクト
今年2月から約1ヶ月に渡って行われたtsumikiチャレンジプロジェクトアワード。
tsumikiを利用いただいている事業者から8組を選抜し、みなさんから応援してもらうというチャレンジャー企画に瀬戸さんもノミネートしました。
取り組みの内容や、環境問題についての瀬戸さん自身の考えなどが評価され、デザイナーで審査員も務めた奥口さんから見事、奥口文結賞を受賞。
tsumikiの1年間利用チケットとともに、奥口さんとのコラボ商品制作の依頼をプレゼントされ、約半年の時間をかけて瀬戸さんと奥口さんとのコラボプロダクトを作ることになります。
今回制作されたものは「グロサリーショップに並んでいるような、お惣菜やお菓子」をモチーフにしたアクセサリー。
ブローチ、イヤリング(ピアスタイプも有り)、リングなどを「カッサータ」「ゼリー」「ヌガー」「ソルトキャンディー」をイメージしたデザインの計6種類のラインナップで、プラスチックの素材を活かしながらも本当の食べ物のような作品からは、美味しい香りが漂ってくるようです。
審査員であり、監修をした奥口さんにも同席いただきプロダクトの制作秘話を伺いました。

「語り手」
瀬戸 美穂さん、奥口 文結さん、吉田(tsumikiスタッフ)
吉田:まず、プロダクトについてのお話の前にtsumikiアワードで奥口さんが瀬戸さん(win_win_win)を選んだ理由について教えていただきたいです。
奥口:まずは当日のプレゼンテーションがしっかり作られていたというところと、環境問題へのアプローチが等身大で共感できたというところが大きかったです。
私自身が「GROCERY PAPER PRODUCTS」という主に紙物を扱ったプロダクトブランドを持っており、立ち上げの時からなるべく環境への負担が少ないプロダクトを作りたいという考えがあったんですね。再利用の観点を含めて瀬戸さんの作品に惹かれ、私のブランドと一緒にコラボレーションして、一緒に楽しいものを作りたいという気持ちから選ばせていただきました。
吉田:いざプロダクトを作ると決まって、どのような作業から始めましたか?
奥口:アイデアを考えるにあたって「私が欲しいもの」を軸に案を出すことにしまして、私の大好きな食べ物をアクセサリーにしたら可愛いなと思い、瀬戸さんに打診しました。
作家さんによってはご自身の作風にこだわって制作されている方もいらっしゃるのでそこは慎重なやり取りになるのですが、瀬戸さんは快く快諾してくれましたので発注者側の意識でたくさん注文させていただきました(笑)

瀬戸:奥口さんからいただいた案が自分だと思い付かないような物ばかりでしたので、作る側としてもとても楽しかったです。
吉田:なるほど、ここまで完成度が高い物だと試行錯誤もたくさんありましたよね。
奥口:食べ物のイメージにより近づけるために色の調整や、質感については細かくお話ししました。例えば、カッサータなんかは木の実っぽいプラスチックを選んでもらったりとか、レジンをマットな白にしてもらうようにお願いしたりとか色々やり取りはしました。
瀬戸:レジンを作品として扱う際は透明感を出すことに良くフォーカスするので、白く濁らせてマットな質感にするというのは逆転の発想というか、私としても新しい試みで勉強になりましたね。

奥口:色の配置とかは瀬戸さんの感性で選んでもらったのですが、すごい良く作ってもらって嬉しかったです。
吉田:ほんとに良く出来てますね。どのような形で販売する予定ですか?
奥口:これからの時期クリスマスなどがあるので、プレゼントとして喜んでもらえる様な形で手に取ってもらえたらなと考えています。あとはせっかくのアップサイクルで作られた物なので、ラッピングの素材も環境に配慮したもので揃えました。

年間800万トン以上もの量が海に流れているという海洋プラスチックゴミ。
砂浜に流れ着いたそのゴミたちは瀬戸さんと奥口さんの二人の想いによって素敵なアクセサリーへと姿を変えました。
そこで、より多くの方に知ってもらうべく、発表会も兼ねてプロダクトの限定POP UP STOREをtsumikiにて開催いたします。直接手に取ってご確認いただけますので、質感を直に感じながらお買い物をお楽しみください。
また、同時に瀬戸さんと奥口さんを交えて商品開発の裏側についてのトークセッションも行う予定です。
ものづくりに携わる方、デザイン、ブランディングに関心のある方にとって大変意義のあるお話が聞けると思いますので、ぜひ皆様のご来場をお待ちしております。

日 時:2025年12月20日(土)13:00-15:30
会 場:利府町まち・ひと・しごと創造ステーションtsumiki
tsumikiでコラボプロダクトを販売するのはこの日のみ。新しいプロダクトについてお2人とお話ししながらお買い物をお楽しみください。(プロダクトの販売は13:00-15:30で開催。お買い物のみのご来館も大歓迎です)
トークセッション「欲しい ものの つくり方」
商品を作るにあたって、売れるかどうかという視点は大切です。一方で、「欲しいもの」のために、「どこかや誰かに負荷をかけていないかどうか」という視点も大切です。
今回のトークセッションでは制作過程をふりかえりながら「欲しい ものの つくり方」について考えます。
時 間:13:30-14:30
参加費:500円(1ドリンク+デザート付き/当日精算)
定 員:20名(要事前申し込み)
トークセッションの申し込みはこちらから▼
https://forms.gle/m4kC2xLCrmHAeLXp6