近年、さまざまな自治体で耳にするようになった「地域おこし協力隊」。
名前は聞いたことがあるけれど、「実際にどんな活動をしているの?」と感じている方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな地域おこし協力隊のお二人(現役とOB)を利府町内外からお呼びして『地域おこしって何?』という視点でお話を伺いました。
利府町と舟形町での事例紹介
まずはお二人の自己紹介を兼ねた事例紹介からスタートしました。
最初にお話しいただいたのは、利府町の元地域おこし協力隊で、現在は利府おもて梨園の代表を務める近江貴之さん。

利府町初の非農家出身の梨農家で、“梨王子”の愛称で現役隊員時代から地域の方々に親しまれている近江さん。
協力隊になる前は大手企業でサラリーマンとして働いていましたが、十数年が経つ中で、次第に達成感ややりがいを感じるベクトルが変わっていったそうです。
そんな中で、「裁量権を持って働くこと」や「ものづくりを通して人に喜んでもらうこと」という自身の価値観と、地域おこし協力隊の活動が重なり、利府町での着任を決めたといいます。
協力隊時代は、梨の師匠や地域の梨農家さん達に師事し、梨の生産について基礎から学んだり、『金の利府梨カレー』の開発や梨園でのライブ開催など、農業の枠にとどまらない取り組みを展開。
現在の利府おもて梨園につながる土台を築いてきました。
続いてお話いただいたのは、山形県舟形町で現役の地域おこし協力隊として活動している佐藤浩二さん。
佐藤さんは昨年、ぶっくかふぇこほんこほんを立ち上げ、現役協力隊員として運営しています。

佐藤さんの協力隊としての目標は、「イベントなどに積極的に参加し、舟形町を多くの人に知ってもらうこと」。
自身でも「チャレンジ精神と好奇心が旺盛で、ポジティブな性格」と語る通り、右も左もわからない状態から、地域の人たちを巻き込みながら活動を広げてきました。
舟形町の協力隊になったきっかけは、コロナ禍にキャンプで訪れた際、偶然出会った地域のおばあちゃんからスイカをもらったこと。
人とのつながりが希薄だった時期にその温かさに触れ、「この町のために何かしたい」と強く感じたそうです。
着任当初は、地域の中で協力隊の認知度が低いことを実感し、最初の1年はとにかく町のさまざまな場所に足を運び、地域の人と積極的にコミュニケーションを取ることを心がけました。
その結果、年度末の報告会には80名以上の地域住民が集まったそうです。
活動を続ける中で、猿羽根山(さばねやま)にあるギャラリーとのご縁が生まれ、昨年7月には「ぶっくかふぇこほんこほん」をオープン。
現在も地域の学生と一緒にイベントを企画するなど、町に良い循環が生まれています。
トークセッション
後半は参加者を交えてのトークセッションを行いました。
当日は利府町内外から現役の地域おこし協力隊も複数名参加しており、ゲストのお二人への関心の高さが伺えました。
多くの質問が寄せられ、終始盛り上がる時間となりましたが、ここではその一部をご紹介します。

地域で活動するうえで欠かせない「人との関係づくり」
トークの中で共通して語られたのは、地域での活動は一人では成り立たず、「人との関係づくり」が何より重要だということでした。
佐藤さんは、協力隊として活動を始めた当初、町内を歩き回り、気になる場所があれば自分から声をかけることを意識していたそうです。挨拶を重ね、質問をたくさんすることで少しずつ顔と名前を覚えてもらい、地域行事にも積極的に参加する中で関係性を築いてきました。
一方、近江さんは、役場やJA、観光協会などに間に入ってもらいながら交流の輪を広げていったといいます。約束を守ることやギブアンドテイクを意識し、「まずは自分から動く」姿勢を大切にしてきたこと、そして論理よりも感情、人を好きになれるかどうかを重視してきたと語りました。
未経験からの挑戦と、地域の支え
近江さんは、非農家出身で梨づくりを始めた経験についても触れました。
師匠について基礎から学び、自分の畑で実践と失敗を重ねながら、3年ほどかけて技術を身につけていったそうです。
一方、佐藤さんにとっても、現在運営している「ぶっくかふぇこほんこほん」は、これまでの仕事とは異なる新しい挑戦でした。店舗や場づくりについて専門的な経験があるわけではなく、手探りの状態からスタートしたといいます。それでも、ブックカフェを始める話を地域の人に伝えていく中で、少しずつ協力の輪が広がり、地域の方々の支えを受けながら活動を続けてきました。
分野は違えど、未経験から一歩を踏み出し、地域との関わりの中で挑戦を続けてきたお二人の姿が印象的でした。
地域おこし協力隊に向いている人とは?
「地域おこし協力隊に向いている人はどんな人か」という話題では、近江さんから、3年間という任期を意識し、ゴールを決めて逆算して行動することの大切さが語られました。
「やりたいこと」「できること」「地域から求められていること」の3つが重なる部分を見極めること、計画を立てすぎるよりも、まず行動して打席に立つことが重要だといいます。
完璧である必要はなく、自分の強みを活かしながら地域に入り込む姿勢が、活動を続けるためのポイントだというメッセージが印象的でした。
さいごに
会場からは、6次産業化や商品開発、特産品のない地域でのお土産づくりなど、さまざまな質問が寄せられました。
小さく始めて実績を積み上げていくことや、地域の困りごととニーズを整理して伝えることなど、実践的なアドバイスが共有され、参加者にとって学びの多い時間となりました。

ポイント
地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年です。
- 自分の経験・能力を活かした地域活性化の仕事に就きながら、理想とする暮らしや生きがいを見つけることができます。
- じっくりと時間をかけて仕事や住居等の、定住に向けた準備ができます。(任期後の定住率 約70%)
- 国・自治体等によるサポートが充実しています。
- 令和6年度は、10代から60代以上までの幅広い年齢層の総勢7,910名が、移住・定住、観光、商品開発の販売、地域コミュニティ活動、漁業・水産業、農業・林業、環境保全、医療・保健、デジタル、教育・文化、スポーツ等の幅広い分野で活躍しています。
総務省HPより引用
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html