【こ・あきないの学校】小商いは「まちの宝」 – 薮内義久さん


12月14日(日)、こ・あきないの学校2025の最終回は、OPTICAL YABUUCHI代表の薮内義久さんがゲストでした。福島県福島市で150年続く(有)薮内時計店(現在は眼鏡店として営業)の5代目として、眼鏡店はもちろんのこと2つの自社ビル(ニューヤブウチビルノノトリビル)のリノベーションにより新たな仲間を集めて、独自のまちづくりを進めています。


眼鏡の専門学校卒業後、就職を経て、親の仕事を継ぐことになった薮内さんは、3階建ての自社ビル(ニューヤブウチビル)2階の空きテナントを使って新たなお店を立ち上げるため、改装に取り掛かります。もともとデザインに関心があり、時間的な余裕もあったことから、自分で床を剥がしたり、壁を塗ったりこつこつとリノベーションを進めていきます。そんな中、同じように改装した空きテナントに関心のある方から声があがり、レコード店の入居が決まります。

空いたままのテナントを自分なりのやり方で改修することで可能性を感じて入ってくれる人がいることを実感した薮内さん。これを契機に自社ビルの改修と同時に入居者探しが進んでいき、今では古書店、レコード店、食堂、ギャラリーとすべてのテナントが埋まっている状態です。2024年には、店舗の向かい側にある4階建ての古いビル(ノノトリビル)を購入し、こちらも同じように改修を加えながら入居者を集めています。

昨年10月にはOPTICAL YABUUCHIの創業150年を記念したイベント「COMES AROUND」を開催しました。音楽やアートを楽しみながらまちの魅力を伝えるイベントとして、たくさんの方に楽しんでいただきました。
通りを挟んで向かい合う2つのビルを中心とした薮内さんの店づくり、ビルづくり、まちづくりには、多くの学びがあります。

目の前にある風景を守るために

OPTICAL YABUUCHIが面する県庁通りですが、昔は百貨店もあり人と人が肩をぶつけるくらいの賑わいがありました。その後、東日本大震災や不況により福島市も大きな影響を受け空き店舗等が目立つようになりました。そんな中、薮内さんはOPTICAL YABUUCHIの店内から見える風景を守るため、新たな取り組みとして向かい側にある築60年のビルの購入を決断します。そして、ニューヤブウチビルと同様に自身でリノベーションを加え、入居者を集めていきます。

「ノノトリビル」と名付けられた建物は、花屋、セレクトショップ、カフェ、アパレルショップ等が入居し、県庁通りの風景が変わりつつあります。将来的には、自社ブランドの工房も設置する予定で、まだまだ進化し続けています。


自立しつつもいざという時に協力できる関係

ニューヤブウチビル3階にある食堂ヒトトは、もともと東京に吉祥寺にあったオーガニックの食材を扱うお店で薮内さんがその魅力に惹かれ、ぜひ福島に来てほしいと声がけをして入居が決まりました。福島でも少ないオーガニックレストランとしてオープンしましたが、当初は、苦戦を強いられました。

その後、メニューや金額等を見直し、今ではランチタイムに行列ができるほど人気店となりました。薮内さんは地元の良いものだけではなく、共感する部分があれば市外・県外のものであっても取り込んでエリアの価値を高めていきます。

同じく3階のOOMACHI GALLERYは、アーティストの金子潤さんが自ら運営するギャラリーで県外のアーティストを積極的に招聘し、注目を集めています。金子さんは、薮内さんが信頼を寄せている仲間の一人で相談することも多いそうです。

薮内さん一人でテナントの改修からはじまった活動でしたが、今では多くの仲間たちとまちをおもしろくするためにさまざまな企画を進めています。それぞれが自立しつつもいざという時に協力できる風通しの良い関係性が魅力的なエリアを形作っています。

火花を見たような感覚

薮内さんのところには、日々、相談が寄せられます。先日も、OPTICAL YABUUCHIの隣にある美容室のスタッフが、北欧旅行をきっかけに北欧雑貨店に興味を持ちはじめ、薮内さんに相談したそうです。相談の結果、まずはノノトリビルの地下を使って北欧マーケットを実施することになりました。イベント経験のなかった美容室のスタッフは、薮内さんのサポートを受けながら準備を進め、きちんと売上も立てて見事、企画を成功させました。

「火花を見たような感覚」と薮内さんは話していましたが、自分で事業を始めようとする人たちを「まちの宝物」だと言い切り、形にするためのサポートを惜しみません。

今回、参加者に配った焼菓子を製造・販売するcoques(コケス)も独立するとき、薮内さんによく相談していたそうです。coquesも今では、人気店となり、イベント出店時は行列ができるくらいです。薮内さんの人柄もあり、周囲からの信頼も厚いことがよくわかります。まちの個性は、小商いの存在は欠かせません。


行政の力を借りないまちづくり

薮内さんが福島市に戻ってから2階の店舗を任され、ビルのリノベーションを施し、少しずつ県庁通りに賑わいが生まれてきました。ビルの中に小さなまちをつくる感覚でOPTICAL YABUUCHIはもちろんのこと、テナントの仲間たちといっしょに商いをしながら福島のカルチャーを更新し続けています。

一方で、地域活性化やまちづくりと聞くと自治体との連携も欠かさせないイメージですが、「COMES AROUND」のイベント開催をきっかけに自治体と関係が生まれましたが、それ以前は薄かったそうです。「補助金や助成金は、事業者にとってありがたいですが、自分たちのやりたいことを曲げてまで頼るものではない」と薮内さんは話します。まずは、自分たちのやりたいことを自治体の担当者に見てもらって、薮内さんたちの考えを理解した上で協力してもらうのが理想的な形だそうです。

2時間の中で薮内さんのこれまでの歩みとそこから得た知見を余すことなくお話ししていただきました。参加者からも「自分の気持ちを無視せずに、まちづくりをされているのだなと感じました。ノノトリビルさん、とっても素敵でした。また進化しているであろう福島へおじゃまするのを楽しみにしています」「イベントを企画するまでのお話やビルのリノベーションがまちづくりにつながっていく過程が大変興味深かったです。お店に行ってみたくなりました」「常に変化を受け入れ、一度決めた事をやりきる力が事業を続けていけるポイントだと感じました」といった感想が寄せられました。

薮内さん、ありがとうございました。

事前インタビューも合わせてご覧ください。

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