【こ・あきないの学校】デザインとローカル – 志田淳さん


10月19日(日)、ディレクター、デザイナー、ラジオパーソナリティーとして活躍するデザインスタジオmemento mori代表の志田淳さんを迎えて開催した「こ・あきないの学校」。志田さんは、普段は地元気仙沼市に拠点を置いていますが、ディレクション・デザインの仕事は多岐に渡り、市外・県外からの依頼も数多く、受けています。

今回は、志田さんに仕事やデザインの考え方、ローカルで仕事をすることなどについて、事例を交えながらお話を伺いました。2時間に渡るプログラムの前半は、志田さんがこれまでに行ったデザインの仕事について紹介していただき、後半は、tsumikiWEEKEND CAFEの新たなメニューとして検討している「おしるこ」を題材に、志田さんの仕事のプロセスを受講生に追体験してもらいました。


基本、依頼は断らない
大学卒業後、気仙沼に戻ってきた志田さんですが、2011年の東日本大震災後、気仙沼には復興の過程でさまざまな人材が集まっていました。数多くのユニークな出会いを重ねる中で少しずつデザインの仕事をする機会も増えました。独学でデザインを身につけた志田さんですが、最初は、知り合いからの依頼を受けながら徐々に仕事を増やしていきました。志田さんは、何事も経験ということで依頼があった仕事については、基本的に断らないスタンスだそうです。

クラフトビールの缶、店舗のロゴデザイン、商業施設のデジタルサイネージ、ふるさと納税のディレクションなど多岐に渡る仕事は、志田さんの断らないというスタンスの結果です。地方でデザイナーとして生きていくためには、イベントの企画やまちづくりの講師などデザインの領域に留まらない幅広い能力が求められます。デザイナーの役割を拡大していく働き方は、とても大変そうですが結果、自分の能力を高める機会にもなり魅力の一つとも言えます。


デザインはリサーチ、仮説設定、設計図が7割、制作は3割
デザインの本質は 「課題を明確にし、それを解決するための設計」 と話す志田さん。クライアントからの依頼を受けて、すぐに制作に取り掛かるのではなく、まずは丁寧にリサーチを重ねて、課題を明らかにします。課題が曖昧なまま取り掛かってても課題解決になりません。その後、リサーチで得られた情報と、クライアントの希望、自分の経験、社会の流れなどを掛け算し、仮説を設定します。さらに仮説をもとに、課題を解決するための手法(設計図)を検討します。場合によっては、依頼いただいた内容を変更す場合もあるそうです。

例えば、お店のロゴの制作の依頼があっても、それがクラインアントの課題解決にならない場合は、そもそものお店のコンセプトを見直すなど新たな提案をすることもあるとのこと。デザインと聞くと「かっこいい!」「かわいい!」など表に出てくる商品やポスターなどに目が行きがちですが、その裏では、リサーチや設計書づくりといった地道な作業に時間を割いています。志田さんの感覚としては、一つの仕事についてリサーチ、仮説設定、設計図が7割、制作の時間は全体の3割程度だそうです。


表出している現象の「なぜ?」を深掘りし、土地と人の文脈を再定義し、新しい未来をつくる
志田さんは、自分の仕事を 「未来を良くする仕事」と分析しています。志田さん自身が関わった商品やプロジェクトによって、それを受け取った人の未来が少しでも良くなることが自分の仕事だと考えています。デザイン、ディレクション、まちづくり、ラジオなどどんな仕事でも一貫している考え方です。目の前で起きている現象について「なぜ?」と疑問を投げかけることに思考を深め、その背景や理由を知ることで新たな改善策を提案する。その繰り返しが新しい未来につながるのかもしれません。


おしるこを題材にデザインプロセスを追体験
志田さんのお話の後は、tsumikiのWEEKEND CAFEの新メニューとして検討している「おしるこ」を題材にどのように商品を打ち出せば良いか、参加者と一緒に考えました。ここでも志田さんはすぐに制作に取り掛かるのではなく、まずは丁寧なヒアリングを行います。

担当スタッフにおしるこの特徴やなぜおしるこを出すのか、そもそもtsumikiに来て欲しい客層などを根掘り葉掘り聴き出します。参加者からも質問が寄せられ、そこから新たな発見やアイデアが生まれました。所要時間は40分程度で、プログラムとしてはここまででしたが、志田さんのデザインプロセスの一部を体験することができました。


参加者から
「デザインに関するイメージが変わった。設計・ヒアリングどの仕事にも活きるポイントだと感じた」
「開業したばかりでしたので、デザインプロセスや質疑応答で応えたいただいたデザイン費も大変参考になりました」
「非常に論理的、具体的なお話ですべての仕事で役立つ内容でした」といった感想が寄せられました。

ゲストの志田さん、お忙しい中、ありがとうございました。

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志田さんおすすめの3冊


こ・あきないの学校終了後、志田さんからおすすめの3冊をご紹介いただきました。気になる方はぜひ読んでみてください。

『beの肩書き』
兼松佳宏 (グリーンズ出版)
表出している肩書き(doの肩書き)と、自分の名前の間にあるbeの肩書き(在り方の肩書き)の見つけ方を提案している本。やりたいことややっていることがさまざまあっても、自分のなかのブレない芯の言語化を助けてくれる本です。 

『アートディレクター/デザイナーの仕事 デザインの手法、思考の源泉」
MdN書籍編集部 (エムディエヌコーポレーション)
国内のアートディレクターやデザイナー164名の実例とともに、スタートする時に考えたことや完成に至るまでの工程が掲載されています。自分の仕事や生活と照らし合わせて見ると面白いです。  

『東北の震災と想像力:我々は何を背負わされたのか』
鷲田清一、赤坂憲雄(講談社) 
東日本大震災を、哲学者の鷲田清一、民俗学者の赤坂憲雄が対話形式で見つめた本。震災前後のコミュニティの在り方、そもそも東北はどんな場所だったのか。震災を機に東北を文化的、民俗学的、哲学的に見つめ直しています。東北に生まれ住みながら知らなかった、気づいていなかったことが数多くあります。

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